現状把握計画策定資金繰り表

【0から作れる】資金繰り表作成完全ガイド

こんにちは、おおともです。
資金繰り表は、企業の現金収支を詳細に把握し、将来の資金不足を未然に防ぐための重要なツールであり、金融機関から提出を求められることが多い書類です。
そこで本記事では、資金繰り表の基本から具体的な作成手順、そして活用方法までを詳しく解説します。

信金さんから資金繰り表を出して欲しいと言われました。

どうすれば作成できますか?

以上のような、資金繰り表の作成方法を知りたい方のご要望にお答えします。

資金繰り表とは

資金繰り表とは、企業の一定期間における現金の収入と支出を一覧化し、資金の流れを把握するための表です。これにより、将来の資金不足や余力を予測し、適切な資金管理を行うことが可能となります。

資金繰り表の作成手順

以下に、資金繰り表の具体的な作成手順をステップ・バイ・ステップで解説します。

必要な資料の準備

1.実績数値の入力に必要な資料

資金繰り表は現預金の動きを可視化するものです。
よって、基本的には現金出納帳預金出納帳から作成します。
会計ソフトからCSVデータの形で出力しておくと、集計・入力時の負担が軽く済みます。
出納帳や会計データに無い未記帳の取引については、通帳領収書等の取引証憑書類を用意します。

※資料が揃わず作成が困難な場合等、試算表を基に作成する方法については、別記事で解説します。

2.計画数値の入力に必要な資料

(1)入金の予定・予測
直近の受注状況が分かる資料、過去実績が分かる資料を準備します。

①直近の受注状況が分かる資料
入金の見通しが立っている売上(請求済、受注済等)が確認できる資料です。
業種やシステムによって異なりますが、通常は受注管理表等と呼ばれています。
なければ、発行した見積書や受領した注文書から、受注済や受注確度の高いものを拾います。

②過去実績が分かる資料
直近の入金確度の高いもの以外は、過去の推移から予測します。
月次の売上が内訳と共に確認できる資料を、今期から過去3期分ほど用意します。
CSVデータ売上台帳推移表(但し内訳のあるもの)等から確認することができます。

(2)支払の予定・予測
入金の予定・予測と同様に、直近の支払状況が分かる資料、過去実績が分かる資料を準備します。

①直近の支払状況が分かる資料
仕入に関しては仕入台帳、販管費に関しては通帳や領収書等の資料です。
今後の返済については、借入金返済明細(返済予定表)を確認します。

②過去実績が分かる資料
今期から過去3期分ほどの仕入台帳や試算表を準備しましょう。

資金繰り表のフォーマット作成

1.資金繰り表の構成

資金繰り表は、以下の項目で構成されます。

前月繰越金:前月からの現金・預金残高。
営業収入:売上金、売掛金の回収、手形の入金など。
営業支出:仕入代金、人件費、経費の支払いなど。
営業収支:営業収入から営業支出を差し引いた金額。
財務収入:借入金の受取など、営業外の収入。
財務支出:借入金の返済など、営業外の支出。
経常収支:営業収支と財務収支の合計。
翌月繰越金:前月繰越金と経常収支の合計。

経常外収支がある場合は、経常収支の下に経常外収支の項目が加わります。
これらの項目を月別に配置し、期間ごとの資金の流れを視覚化します。

資金繰り表は、現預金残高で各項目を挟むので、サンドイッチに例えることができそうです。
営業収入=野菜、営業支出=チーズ、財務支出=ハム、とイメージすると覚えやすいでしょう。
その場合、野菜多めパン厚めが望ましい形、と言えます。

2.資金繰り表のテンプレート(雛形)を利用する場合

上記の構成に沿っていれば資金繰り表の様式は基本的に自由です。
テンプレートを使用したい場合、取引金融機関が配布されているものを使われても良いでしょう。

当ブログでは、以下に様式の作成方法をご紹介します。
ご自身での作成が難しい方に関しては、無料で差し上げています。
もしご希望の場合はお問い合わせフォームからご連絡下さい。

3.資金繰り表をエクセルで作成する場合

前述の構成を踏まえ、Excelで作成する方法をレクチャーします。

  • 枠の作成
  • 列名の設定
  • 項目の作成
  • 数式の設定
  • 体裁を整える
枠の作成

15列×28行ほどに罫線を掛けます。
使用する列数は、ここでは項目列3列+12か月分で15列とします。
行数は必要に応じて調整するので、大体で構いません。

列名の設定

列名(縦の項目)の見出しとして、年月を入れていきます。
ここでは、過去3か月実績+今後の予想9ヶ月で作成します。
表示する年月の範囲については、提出先の要望に沿って調整されると良いでしょう。

項目の設定

前月繰越金、営業収支、財務収支、翌月繰越金の順に配置します。
営業収支・財務収支はそれぞれに入りと出を作ります(営業収入と営業支出、借入と返済)。
それぞれに合計行を設け、翌月繰越金の上には経常収支の行を追加します。

次に、自社の業種や資金繰りの特性に合わせて、各項目に細目を加えていきます。

① 営業収入
現金売上高や売掛金の回収額がここに入ります。
例えば飲食店や小売店の場合、現金売上・カード売上入金等です。
ここでは、現金売上・売掛金回収・手形割引・手形期日到来・その他としています。
製造業や卸売業で且つ手形を使用する場合の形です。

② 営業支出
大まかに括る場合は、現金仕入、掛仕入、人件費、経費、支払利息に分けます。
あとは経費の大きいものや変動に注意が必要なものを別項目とします。
仕入先により支払サイトが異なる場合は、掛仕入を仕入先別に分けると見やすくなります。
経費を詳細に把握・調整したい場合は、勘定科目通りに書き出しても良いでしょう。

③ 財務収入(借入等)
金融機関借入や役員借入等が入ります。

④ 財務支出(返済等)
金融機関別に項目を設けます。

これらを反映すると、以下のようになります。

数式の設定

以下の数式を設定します。
① 前月繰越金=前月の翌月繰越金(月末現預金残高)
② 営業収入・営業支出・財務収入・財務支出=それぞれの細目の合計
③ 営業収支合計・財務収支合計=それぞれの収入合計-支出合計
④ 経常収支合計=営業収支合計+財務収支合計
⑤ 翌月繰越金=前月繰越金+経常収支合計

これらを入力すると以下のようになります。

体裁を整える

① 項目タイトル部分を結合し、全体の列幅を調整します。
② 合計行や翌月繰越金行等に色付けし、メリハリをつけます。
③ 不要な罫線を消去や、境目の罫線を変える等します。
④ 会社名や単位表示を付けます。
⑤ 金額欄の表示形式を「#,##0;”▲”#,##0;”-“」とします。

ここでは円単位としていますが、扱う金額の大きさに応じて千円単位へ変更してください。
円単位で入力し、表示を千円単位とする場合は「#,##0,;”▲”#,##0,;”-“」とします。

これで様式は完成です。

実績数値の入力

1.現預金残高

①資金繰り表開始月
資金繰り表の開始月(左端の月)の月初現預金残高を入力します。
各出納帳の残高を合計するか、もしくは試算表から金額を確認します。
対象月の試算表がない場合は、出納帳や通帳等から確認します。
この場合、預金口座が網羅できているか(定期預金等が漏れていないか)ご注意ください。

②開始月の翌月以降
基本的には自動計算とし入力しませんが、各月の月末現預金残と一致させる必要があります。
営業収支及び財務収支の実績を一通り入力し終えた際は、残高が一致しているか確認しましょう。
もし一致しない場合は、差額調整用の項目を設け、その欄にて調整します。

2. 営業収入

基本的には、各出納帳から合計額を月ごとに拾い合算・入力ですが、それでは大変です。
現金及び預金出納帳は、会計ソフトをお使いであれば会計ソフトから出力できます。
よって、もし自計化(自社で仕訳入力)済であれば、会計データをExcelやCSVで出力しましょう。
未記帳にて直近の実績が不明な場合は、取引証憑書類を確認します。

営業収入は、業種や売上構成を踏まえ、得意先別、商品別、セグメント別等の切り口で細分化します。
売上台帳や会計データを使わず、試算表から簡易的に作成する場合は、以下の方法で入力します。
現金売上:売上から売掛金の借方を引いた額
売掛金の回収:売掛金の貸方の額
その他:営業外収入の貸方の額
尚、試算表を基に入力される際は税込・税抜に注意しましょう(資金繰り表は税込)。

3. 営業支出

営業支出は以下のような項目で分類するのが一般的です。
この形でも良いですし、試算表同様に勘定科目で分ければ、より精度を高めることができます。

買掛金支払:買掛金の借方
人件費:役員報酬、従業員給与、法定福利費、福利厚生費
諸経費:人件費以外の販管費
支払利息割引料:支払利息等
その他:税金、営業外支出等

試算表上の経費の値を資金繰り表の各支出にそのままま当てはめると、ズレが生じます。
小さいズレであれば、その他や経費に加算する等で調整し、実際の現預金残と合うようにします。

4. 財務収入

新規・追加融資の金額が入ります。
預金出納帳もくしは通帳を確認し、金額を入力します。
試算表から入力する場合は「借入金の貸方」を確認します。

5. 財務支出

返済予定表を基に、元金返済額を入力します。
試算表の「借入金の借方」でも確認できます。

予測数値の入力

1. 当月分

①営業収入の入力
 発行済みの請求書、受注管理表、過去の売上実績等から当月の入金額を予測します。
 
②営業支出の入力
 買掛金支払:受取済みの請求書から集計(もしくは支払管理台帳があればそちらから)
 人件費・諸経費:前月をベースに増減が見込まれる箇所を調整(加減算)
 支払利息割引料:支払利息は返済予定表から
 その他:税金、営業外支出の見込があれば追加

③財務収支の入力
 返済予定表に基づき、過去実績同様作成します。

2.翌月以降

① 当月と同額(横ばい)でセット
 確定しているもの以外は、端数を丸めます。
 季節変動や得意先毎の変化も考慮しましょう。

② 売上回収・仕入代金支払への季節変動調整
 B to C の場合:過去3期程度の季節変動傾向と増加率をみて、月毎の増減を調整します。
 B to B の場合:得意先別の受注見込、入金サイト、支払サイト等を考慮して調整します。

③ 毎年定期的に発生する支出の入力
 税金の納付、税理士への決算報酬等

④ 単発で発生する支出の入力
 設備投資、退職金の支払、保証協会の保証料等

その他

受注管理表と連動させる方法

得意先が事業者の場合、受注管理表(見積番号・見積日・見積金額・得意先名・受注日・受注金額等をまとめたファイル)を何かしら作成されているかと思います。
この管理表と資金繰り表をリンクさせれば、資金繰り表へ同じ内容を入力する二度手間が無くなる上に、資金繰り表の入金予測の精度向上に繋がります。

【手順】
①受注管理表(任意の様式でOK)の入金予定日を追加
②資金繰り表の収入項目にSUMIF関数を設定(取引先名と日付範囲の一致で集計)

【注意点】
・得意先名が完全一致となること
・税込金額が反映されるようにすること(受注管理表が税抜の場合、資金繰り表で1.1倍すればOK)

※受注管理表の作成方法については、別ページで解説しますので、暫くお待ちください。

月途中の現預金残高を表示する方法

決済日情報を入れ、それをSUMPRODUCT関数で参照するば、月途中での一時的な資金ショートも可視化することができます。

【手順】
①月末現預金残高行の上に行を追加
②追加した行の項目名を「〇日時点残高」として、その値を数値として認識できるよう書式設定
③収支の各項目に決済日情報を追加(数値は値として認識できる形とする)
④各月のセルに数式を設定(SUMPRODUCT関数を使用し、②の日より前の入出金を集計)

【注意点】
この方法の場合、月跨ぎ(月末が土日で翌月にずれ込む場合)に対応できません。
問題を回避するには、毎月の列の横に決済日列を追加する方法があります。
見栄えが気になる場合は、印刷の時する時のみ非表示とできるよう列をグループ化すれば解決します。

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